Aの音を合わせられたら、そこから完全4度上のD 、その次は完全5度下のGを合わせていきます。
ピアノの調律には平均律が用いられますが、これを人間の聴力で合わせるにはどうしたら良いでしょう。
それを可能にするのは、2つの音を同時に鳴らした時に起こる音の性質を利用します。
音叉の説明で唸りについて触れましたが、同じ音高(ユニゾン)以外でも唸りを聴き取ることにより、色々な音程が合っているかどうかを確認することができます。
例えば、1オクターブ離れた音でも唸りのない音に合わせれば、正しい調律ができます。
空気の振動の内、20Hz(1秒間に20回の振動)から20,000Hz位が人間の耳で聴き取ることができるとされています。
A=440と仮定して、1オクターブ上のAは880Hzになります。
比率は1:2です。
完全5度上のEは660Hzの時、AとEは唸りのない響きを奏でます。
比率は2:3です。
他にも色々作れますが、この程度の単純な整数比で表せる音程は唸りがなく良く響き、『協和』と呼びます。
完全5度や完全4度で全く唸りのない状態を次々に繰り広げ1オクターブ分の12音を作り出し、最後にもう1つ最初の音に戻る13番目の音を合わせると、最初と最後が同じ音(若しくは1オクターブ上か下)に成らず、音がずれてしまいます。D♭とC#における異名同音のような感じです。
半音を100等分して約23.46(セント)、おおよそ半音の4分の1弱です。計算上は75:74と74:73の間になります。
この完全5度を積み上げて1オクターブ内にまとめた音律を考案者に因んで、ピタゴラス律(ピタゴラス音階)と呼んでいます。
この音律だと異名同音があまりにもずれてしまうことと、長3度の響きが悪いことが大きな理由で純正律や平均律が考案され、鍵盤楽器の演奏を始め多くの音楽が平均律で奏でられています。
平均律で完全4度を作るには、唸りのない3:4の振動数比である純正律と同じ完全4度を合わせ、そこから少しだけ音高を下げます。
基礎調律をする辺りの完全4度の唸りは、約2秒に1回です。
完全5度の場合は、少しだけ音高を上げます。
先ほどの半音を100等分する要領で示せば、唸りのない完全4度5度と平均律の完全4度5度との差は僅か約2セントになります。
殆どの人が気にならない誤差程度の違いです。
この差をそれぞれの完全4度5度に割り振るわけですから、調律師の職人技が如何に凄いかがわかります。
何となく感覚的にやっているようにも見えますが、平均律の欠点をうまく使って正しく割り振られたかを確認することができます。
それは長3度や長10度(1オクターブと3度)、また短6度も同様に確認用に使います。
平均律のこれらの音程は協和しなければならないにも拘わらず、よく聴くとはっきりした唸りを聴くことができます。
これを利用して、最初に試したい音と長3度との唸りを聴き取り、半音上げた長3度の唸りが先ほどの唸りよりも少しだけ間隔が狭まれば良いのです。
これを1オクターブ上まで行い、唸りの増え方が均等で且つ、1オクターブ上の唸りが元の唸りの2倍になっていれば平均律が正しく割り振られたことになります。
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