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現在の西洋音楽やポップスは、平均律を用いて演奏される場合が殆どです。
しかし、個人的には純正律が好きです。
因みに高校時代の音楽の後期のテストでは、純正律についてのレポートを作成しました。
内容は稚拙ではありましたが、当時の高校生が純正律を研究するということは珍しい事だったはずです。
まだハーモニーディレクターは存在せず、吹奏楽の世界でも殆ど純正律について語られていなかったと思います。
大学に進学して楽器学資料館が所蔵する、田中正平が作った純正調オルガンを触らせてもらった時は、とても感動しました。

当時、興味を持つ学生には惜しむことなく詳しく解説してくれた郡司すみ教授には、大変感謝しています。
郡司すみ教授には、ピアノの構造についても個人的に沢山のことを教えていただきました。
『田中正平と純正調』や『正しい音階』を何度も読み、純正律への理解が深まりました。


音叉やチューナーの音をテープレコーダーに録音して再生速度を微調整しながら、唸りのない長3度を再現したりするなど、我ながら涙ぐましい実験をした覚えがあります。
後年『ハーモニーディレクター』の登場により、広く純正律を始めとする色々な音律を体感できるようになって、便利な世の中になったと思います。
理論的に組み立てられても、単純な整数比でハーモニーが組み立てられなければ、心地よい響きは得られません。
故に生半可な知識で、『純正律命!』みたいに語っている人を見ると軽蔑してしまいます。
持論として、管楽器、弦楽器、声楽など、音程の微調整のできる楽器のみで演奏し、且つ長三和音の持続する純粋な響きが必要な時に、お互いが唸りのない音を合わせる意味で結果的に純正律となる使われ方が正しいと言えます。
マニアックに考えれば属7の和音も4:5:6:7となって綺麗ですが、平均律に慣れていると第7音はかなり低く聞こえます。
但し純正律では、第7倍音は音階の中に含まれません。
響きは溶け合っても、音高の余りの低さに音階上の音としては使えなかったのでしょう。
属9の4:5:6:7:9や根音を省略した5:6:7:9ポピュラー的にはⅡm7♭5も行けそうです。
メジャー7のⅠM7は8:10:12:15ですかね。
しかしこのように拡大していくと、『簡単な整数比』から少しずつ離れていきます。
また理論上は短音階の純正律も作られていますが、純正律の『短三和音』を聴いて美しいとは思えません。比率は先ほどのⅠM7の主音を除いた部分と同じ、10:12:15になります。
私の耳にはとてもではありませんが、澄みきった心地良い音には聞こえませんでした。
ところが確認のために調べてみると、とんでもない情報に出会いました。
2025年5月3日現在、『純正律 短三和音』で検索すると『5:6:9』と表示されたのです。
2025年5月4日現在では、『5:6:8』でした。
誰かの誤った情報が、AIによって収集されてしまっているようです。
短三和音の根音と第5音の音程は完全5度なので2:3にならなければいけませんが、この検索結果だと5:9になってしまいます。
これは大全音を使った場合の短7度となり、明らかに間違いです。
因みに『5:6:9』だと、例として『ミソレ』の音が当てはまります。
『5:6:8』なら『ミソド』の音が当てはまります。
純粋なハーモニーを作るためと実用性との兼ね合いは、多くの研究がなされています。
平均律も現在最も広く普及しているのは、『12平均律』ですが、1オクターブをもっと細かく分けた平均律も存在します。
それにより組み合わせによっては、人間の耳ではほぼ綺麗に響かせることができるようです。
しかし、1オクターブに12個以上の音を配置することは、演奏の困難さと楽譜の記譜の難しさから、現実には普及していないようです。
転調や移調に便利な平均律と、唸りのない美しいハーモニーを奏でられる純正率とは、どうやって棲み分けたら良いのでしょうか。
私なりに出した答えは次の通りです。
結果として普段は平均律を用いて、ここぞという時の長三和音のみ純正律を用いて演奏するのが現実的だと言えます。
如何でしたでしょうか。
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