次に金管楽器を見ていきましょう。
殆どの金管楽器は共通点が多く、金管楽器だと認識するのにさほど難しさは感じないでしょう。
トロンボーンだけ、スライドを動かすので他の金管楽器に比べて異質に感じるかも知れませんが、音程調節の仕組みが単純なのと、音程の微調整やグリッサンドがし易いという特徴があります。
逆にスライドを主に操作して音程を変化させるので、特定の音程間の移動は他の楽器に比べて苦手になります。
スライドを使わずにバルブで音程変化させるトロンボーンや、折れ曲がった形状をしたチンバッソという名前の楽器もあります。
トロンボーンのスライドにはポジションという概念があります。
自由に動かせるスライドでも、演奏する音に合わせて決められた7つのポジションから最適な場所を選びます。
7つのポジションしかないのに、1オクターブ12音+2オクターブ以上の音域をカバーするのはどうしたら良いのでしょうか。
後述する他の金管楽器にも当てはまりますが、同じポジションでも一定の異なる音を演奏できるのです。
管の中で空気を振動させて共鳴させたり、弦を弾いた時に、元となる振動の整数倍(閉管の場合は奇数倍)の振動数の音を発し、その混ざり具合で基本的な音色が決まります。
自然倍音は平均律で得られる音とは異なるので、微調整が必要になります。
特に第5倍音や第7倍音を使う時は、平均律からかなりずれてしまいます。
別の場面で単純な和音を合わせる時は、唸りのない響きを追求する必要があります。
この場合も先ずは、正しい管の長さを調節することが肝心です。
また唇の緊張を増したり、息の圧力を高め勢いを増したりする事によっても、音程の微調整ができます。
スライドとピストンの違いはあありますが、トロンボーン以外の金管楽器にもこの原理は成り立ちます。
その他の金管楽器は、基本的に3個のバルブ(ピストン又はロータリーバルブ)がついています。
場合によっては4個5個と3個以上付いている場合もありますが、基本は3個です。
押すか押さないかの2択なので一見2進法のようですが、使い勝手や習慣により1番目を押すと全音下がり、2番目は半音下がり、3番目は全音+半音下がるよう(1音半)変化します。
この組合せにより完全5度の範囲までの半音を作り出すことができます。
「ソ」の音から下の「ド」の音までの完全5度の音で説明します。
B管の楽器ならFからBまでです。(ドイツ音名表記)
- 開放状態で「ソ」
- 2番ピストンで「ファ♯」
- 1番ピストンで「ファ」
- 1番と2番ピストンを合わせて「ミ」
- 2番と3番ピストンを合わせて「レ♯」
- 1番と2番ピストンを合わせて「レ」
- 1番と2番と3番ピストンを合わせて「ド♯」
- 開放状態で「ド」
最初の開放状態の「ソ」は、第3倍音が鳴っています。
最後の「ド」は、第2倍音が鳴っています。
この先も同様に第2倍音にて半音ずつ下げていくと、下の「ファ♯」まで出すことができます。
ここまでが、金管楽器の標準音域の下限となります。
4本ピストンならば、まだ行けます。
同様に、もっと高音の倍音から半音ずつ下げれば、かなりの音域を半音階で賄えます。
標準音域から下の音は、管の長さ調節ではなく唇を緩めたり息のスピードを落としたりしながら調整して音を出しますが、基音以外は管の長さが合わないため、安定した音を鳴らすのは困難です。
トランペットの大きさでは、基音すら鳴らしにくくなります。
この辺の音を、ペダルトーンと呼んでいます。
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